2017年4月24日月曜日

開発コンサルタントになりたい人へ。〜年収やキャリアパス、新卒でもなれるの?などの疑問に答えます〜

国際協力業界への関わり方の1つに開発コンサルティング業界で働く、つまり、開発コンサルタントとして働く、という選択肢があります。

実は国際開発、国際協力、ODAプロジェクト(特にJICAのプロジェクト)には相当関わりが深いこの仕事ですが、

実際の業務としては日々何をしているのか?
そもそも開発コンサルタント(開発コンサルティング業界)とは何なのか?
給与や待遇はどうなのか?
どうやったらなれるのか?

については、一般にはほとんど知られていないのが実情です。

私も初対面の人に
「職業は開発コンサルタントです。」
と言ってわかってもらえたことは、業界関係者を除いて一度もありません。

本エントリでは、

  1. 開発コンサルタントとは?
  2. 開発コンサルタントになるには?
  3. 新卒でもなれるのか?
  4. 転職するには?
  5. 英語力など必要なスキルは?
  6. 実際のところ収入ってどれくらい?

などなど、重要だけど一般にはあまり公開されていない点について説明していきます。

【1. 開発コンサルタントとは? 】
開発コンサルタントとは、政府系のODAのような開発援助プロジェクト、国際協力プロジェクトを実施するにあたり、現場のマネジメントをしたり、国際開発の現場で専門的なスキルを提供する人達のことです。

ODAとはOfficial Develpment Assistanceで、その名の通り、政府など公的な機関がお金を出す、有り体にいうと公共事業で、予算を持っているのは国や、JICAなど国の外郭団体です。
とは言え、JICAなどの政府系機関が途上国の援助をしようとしても、彼ら(準)公務員は各分野の専門家ではないので、高度な専門性が要求される部分については、民間の専門家に委託する、ということです。

例えば、
アフリカの村に井戸を掘るプロジェクト
があったとすると、
役割分担は以下のようになります。

・外務省(予算の大枠を決める人
大枠(どの国・地域のどの分野に何十億円とか)での予算を確保し、外郭団体へのJICAへ予算を配布、どの国にいくら予算をつけるか、大枠を決める。

・JICA(細かい予算を決める、民間へ外注する)
予算を元に各国のどのような分野に予算を配分するか、各分野でどのようなプロジェクトを実施するか、のアウトラインをつくり、民間の事業者に発注(細かい計画などを提案してもらう)する。発注した業務の進捗確認。

・コンサルタント(JICAから仕事を受ける、決められた予算を使って実際にやる人
JICAから発注された業務概要を元に、プロジェクトの実施工程など詳細を作成、提案する。受注後、プロジェクトを実施して、報告書の作成、JICAへの報告を行う。

つまり、援助する日本サイドでは、一番現場に近い(良くも悪くも泥臭い)立ち位置になるわけで、実際の業務も、良くも悪くもその立ち位置を反映したものになります。。。

逆に、紙を作るのが仕事の役所仕事より、現場(アジアとかアフリカとか)が好きな人は向いているかもしれません。
ただ、役所と仕事している以上、役所の求めに応じて大量の書類作成は免れませんが。


【2. 開発コンサルタントになるには?】
これはいろいろなキャリアパスがありますが、
新卒であれば、青年海外協力隊に応募し海外経験を積むのが一番効率が良いです。
帰国後の就職先も保証されていなしややリスク高いように感じるかもしれませんが、
 海外系の業務につくには海外経験が必要→海外経験がないから海外関係の業務につけない→経験値がたまらない→…

という若くして国際協力に関わりたい人が往往にしてぶち当たる負のスパイラルの壁を越える足がかりになります。

すでに社会人経験があり、特定の専門分野で数年(できれば5年以上)のキャリアがあれば、いきなりコンサルタントへ転職というのも可能ですが、ご自身の専門性が、そのときの開発援助のトレンドにマッチしていることが前提となります。
逆に言えば、いくら専門性を身につけても、いざ開発コンサルタントへ転職しようとしたときに、その分野での人材の需要がなければ、専門性は活かせない、ということになります。なので、専門性をつけてから国際協力業界へ!と考えている人は、業界のトレンドと人材の需給の見通しをしっかり持っておく必要があります。

恐らく、20代で既に働いている人が開発コンサルタントに興味を持ち、業界関係者に転職の相談をすると、「経験を積んで30代前半で転職するのがいいよ」という答えが返ってくると思います。
ただ、上述の通り、30代前半まで数年間の経験を積んだところで、それがその時の国際協力のトレンドに合っていなければ意味がありません。確かに経験を積んでから国際協力業界に入った方が、すぐに専門的な仕事に関われるのは間違いありませんが、このようなリスクがあることは念頭に置く必要があります。
経験を積んでから国際協力業界へ、と考えている人は、常に国際協力業界のトレンドと自分の専門性にずれがないかを意識するようにしましょう。

やや脇道にそれましたが、それ以外では、社会人経験者、協力隊経験者で、イギリスの大学院で国際開発修士(1年で取れる)をとる人も多く、採用時も語学、国際協力への理解度などそれなりに評価されます(ただそれなりにお金かかります)。

【3.新卒でもなれるのか?】
これは一概には言えませんが、門戸は開いているけど、それなりに競争は激しい、
というとこでしょうか。

これまでは、開発コンサルタント業界では若手養成の余裕がないことから、開発コンサルティング分野での新人の採用はあまり行われてきませんでしたが、
最近は各社とも若手〜中堅の深刻な不足から、新たに新卒採用を始めたところもあります。

とは言え大手が中心で、開発コンサルタントの多くを占める、中小企業では新卒の採用はほとんどないと思った方がいいでしょう。
先にも書いたように、新卒からの就職を考えるなら青年海外協力隊が一番確率が高いと思われます。
ちなみに私が知っている採用者の例を挙げると

- 国内大学を卒業後(文系)、英国で開発修士を取得
- 大学院卒(理系)、青年海外協力隊へ参加
- 学部を海外(英語圏)で卒業(文系)

という感じです。

なので、それなりに英語ができたとしても、海外経験がないときびしいかもしれません(海外の大学を出てても落とされることもザラです)。
逆に言えば、英語力、海外経験、国際開発に関する知識やバックグラウンド、業務に直接的に役立ちそうな専門性
がありさえすれば、新卒でも採用される確率は十分にあると思います。

また、理系で専門性がないと採用されないのか、というと必ずしもそうではありません。
プロジェクトにはいろんな業務があるので、初めは庶務(業務調整と言われます)のような仕事でプロジェクトに入り、知識や経験を積んで行く、というキャリアパスの人も中にはいます(若手が多いです)。
が、このポジションは、要するにベテランさん始めとするみんなの雑務処理のような要素が強いので、プロジェクトのメンバーが利用したタクシーの領収書をかき集めてExcelに打ち込んで、、とか、領収書の必要事項がなくて経理の人と揉めたり、、、とか、まあ結構不毛な作業が多いのでそれなりに覚悟が必要です(経験済み 笑)。

【転職するには?】
中途の場合は、持っている専門性が国際開発のトレンドとマッチするか、この一点につきます。最近は技術者不足から、高い専門性が要求されるものは、一部語学力不問、という条件での業務発注も行われており、半端な語学力よりは、トレンドにあった技術力が一番の武器になります。もちろん英語はできるに越したことはないですが。
転職先探しは、先のエントリにも書いた、PARTNERというサイトですね。
業界全体として技術者不足なので、トレンドにあった専門性を持っている人が転職するのは比較的容易だと思います。

【5. 英語など必要なスキルは?】
一部ここまでの繰り返しになってしまいますが、
1. 英語力(もしくはフランス語、スペイン語等)
2. 協力を行う分野の専門性
3. 国際開発に関する知識など
4. 海外在住経験(サバイバル力、危機管理能力)
5. 体力

ですね。
4,5は意外に大事で、コンサルタントは電気、水道などないような途上国のど田舎の村に滞在したりするので、こうしたサバイバル力は大事です。特に若手の間は。体調くずしちゃったら仕事にならないですし、最悪命に関わるので。
また、JICAからありえない短期間での無茶振りを受けたりと、睡眠時間を削って働かなくてはいけないことも多いです。
海外出張では、平日に日本で5時まで仕事してそのまま空港へ行き夜行便で出張先へ、朝到着してそのまま相手とのミーティング、、、みたいなスケジュールもよくあります(開発コンサルに限ったことではないかもしれませんが)。というわけで体力面は地味に重要です。


英語力は、抜きん出た専門性があれば話は別ですが、通常のビジネスレベルの会話力、TOECIだと800点は最低でも欲しいでしょうか。
TOEIC = 業務上の英語力ではないので、一概には言えませんが、努力でどうにでもなる部分なので、これくらいはクリアしておきたいところです。

【6. ぶっちゃけ年収ってどれくらい?】
これは会社によって違いますが、基本の給与自体は大して高くないです。地方公務員の収入と同じくらいか少し低いくらいじゃないでしょうか。
ただし、海外出張に行くとそれなりの手当てがだいたいの会社ではつき、場合によっては手当ての方が給与よりも多いなんてこともあるので、海外への出張が多ければ、一般的な会社員の平均は大きく上回るでしょう。
1年の半分くらい出張したとして、20台半ばで平均手取り35万(残業代、ボーナス含めず)くらいってとこでしょうか。
もちろん諸々の条件で変わるのですが、目安として。


【最後に】
色々書きましたが、私がこの業界で働き始めた時に感じたのは、仕事に興味を持って働いている人が多いな、ということでした。
以前働いていた組織の先輩や同僚は、
仕事は給与のためにする作業
みたいな感覚でしたが、
開発コンサルタント業界の人は、仕事=興味の湧く面白いもの、という捉え方をしている人が多いです。

例えば、

最近***の案件をやってます。

というと、

面白そうですね!

という回答が返ってくることが多いです。

仕事に”面白い”という表現を使うのは当時新鮮に感じたのを覚えています。

個人的には色々葛藤もあり辞めてしまいましたが、知的好奇心が強く、純粋な興味などで動いていける人(あと体力がある人)には向いているのかもしれません。
 ただ、清濁合わせ飲みまくり(”濁”多め)なので、純粋な国際協力への期待が強すぎるとギャップに苦しむと思います。
あとは、あくまでクライアントが役所(JICA)なので、お役所仕事へ合わせる柔軟性というか、忍耐力も必要です。
お役所仕事の一部を委託されているわけなので、ペーパーワークも多いです。

【開発コンサルティング業界の情報収集について】
 情報収集が難しい開発コンサルティング業界ですが、最低限国際協力ガイドは目を通しておいて損はないでしょう。各社の求人やキャリアパスの事例など業界のトレンドや概要が掴めます。

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